先日のTOMOYO Linux Nightをカーネル読書会で共催(?)させていただいた縁でいろいろ企業とOSSのかかわり、コミュニティとのアライアンスなど考えるきっかけを頂戴した。ありがたいことである。
昔からLinuxとかフリーソフトウェアが好きでずうっとやっていたFLOSS界の長老(20世紀のころからLinuxをいじっていた人々)と、会社の中でいろいろなしがらみ障壁を乗り越えがんばって来た方々とではFLOSSに対するスタンスや思いというのがかなり違うという実感がある。
OSSが豊かに健全に成長するにはビジネスの力が絶対に必要だという立場にわたしは立つのであるが、もちろんそうでない立場の人もいることは理解している。結果としてオープンソースやフリーソフトウェアが広まればフリーソフトウェアの人達にとっても悪いことはないと思うのだが、今回はそこには触れない。
企業のサポートによって開発されたOSSをどのように普及推進するかというのが今回の命題である。コミュニティはそれをどのように支援できるのか、できないのか、すべきなのか、すべきではないのか、双方にとってメリットのあるアライアンスの形態はどのようなものになるのかならないのか、というのが今回の問題である。
コミュニティと言うのは企業とか個人とかと異なり目に見えない曖昧な実体なのであるが、ここでは定義については踏み込まない。
バザールモデルは定義により、コアとなるソフトウェアを誰かが作って、それは個人であってもいいし企業であってもいい、それを不特定多数の善意のボランティアがよってたかって改良していくというソフトウェア開発モデルである。ここでボランティアというのはその活動によって収入を得ているか否かではなく自発的な意志によってその活動に参加している人のことを差すことにする。
コアとなるソフトウェアが個人によって開発されたものであれば、その開発の継続性はオリジナルの開発者の意志や情熱に依存する。そのソフトウェアの機能に注目し利用者が増えそのソフトウェアに共感した第三者があらわれればパッチを作ってくれるかもしれない。バザールが発生する瞬間である。
企業発のソフトウェアの場合、開発の継続性は企業の支援に依存する。スポンサーがいなくなれば失速する可能性が高い。たとえそのソフトウェアのアイデアが企業に属する個人によって生まれたとしても、それを実装するコストは企業が負担している以上、その個人の情熱だけでは継続するのは難しい。
企業内ハッカーの場合、社内のスポンサーというか金と権限を持っているパトロンが絶対必要になる。企業の研究所の場合、即事業化できなくても(売上がすくたたなくても)、別の名目で開発をおこなうことはできなくはないが、それも将来的に事業に結びつかないと評価されると継続することはできない。
日本にはOSS専業ベンダーというのが、少ないので(われわれもがんばらないといけないのだけど)、OSS専業ベンダーに就職して思う存分コードをハックするというめぐまれた環境にいる人はほとんどいない。
ビジネスとOSSの関わりでいうと企業規模が大きいところでオープンソースを将来の投資としておこなっているというのが大半(?)かなと思う。国内ハードウェアベンダーだとハードを売るためという大義名分がたつので、それでもカーネルやミドルウェア分野で開発めいた事ができるが、SIerだとそれもなかなか難しいというのが実状である。
それを理解した上でコミュニティは企業内ハッカーをどう支援できるのか?そもそもそんなことは可能なのか?
例えば、わたしがどこどこ社の偉い人に直談判してオープンソースを開発しているXXさんを支援してくださいなどとお願いにいけばうまくいくのか。1998年のNetscape社の取締役会はEric Raymondを呼んで「バザールモデル」について議論して、ソースコードの公開方法などを決定したそうだから100%不可能とは言えないが、宝くじを買うより確率は低そうな話である。(ちょっと考えにくいが不可能ではないかもしれない)
まあ、日本OSS推進フォーラムのような偉い人の集まりに行って一般論として企業のOSS支援についてなどと語ることは不可能ではない。
Web2.0系のネットベンチャーは皮膚感覚でOSSを利用しているし、コミュニティの重要性も理解しているので、上のような苦労はないが、伝統的な日本の大企業の偉い人を動かすには、それなりのお作法が必要である。
結局のところ企業の利益に貢献しなければOSSの開発も持続できない。利益は売上から経費を引き算して生まれるから、当該OSSを利用してSIやコンサルなりなんなりして稼ぐという方法(売上を増加させる)と、開発コストを下げる方法のあわせ技になる。
OSSのコア開発者がいるという事がある種の宣伝広告になるという立場で、ゼロ円で宣伝ができている、すなわち宣伝コストを低くできたといような方便も時には必要である。そのような方便というか説得するシナリオを沢山もっていって社内のカネと権限を持っている人を動かす。
雑誌記事やウェブなどでのマーケティング活動も重要で、通常の宣伝広告費など潤沢には使えないので、ほぼコスト無でのバイラル型マーケティングが重要になる。
OSSそのものを利用してのSIとかコンサルは直接的な売上に結びつくので分りやすい。開発者やそのOSSでの著名人がいると、安心感、信頼感が増すので営業活動も通常よりもやりやすくなる。社内での知名度なども大きな会社では重要で、社外からの引合で社内営業がそのOSSを再発見するということも少なくない。
コミュニティの人間ができることと言えば、そのOSSを利用してフィードバックをかける事くらいだが、企業に属しているのならば、OSSを社内システムないしはSIに利用し、当該OSS開発企業に有償コンサルやSIを依頼するというのも手である。
OSSは利用が進めば進むほど不具合は発見され修正されるし、機能も洗練されていくので、利用者として開発コミュニティとアライアンスを組む事は利益がある。それを企業のユーザとしてビジネスの一貫として関与することが企業人でありコミュニティの人間としてできる事かもしれない。
そのようなエコシステムをどうやって構築していくのだろうか?
簡単ではないが不可能でもないと思っている。
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