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プロフィール

吉岡 弘隆 - よしおか ひろたか

日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員
OSDL Board of Directorsを歴任
カーネル読書会主宰

2000年6月、ミラクル・リナックスの創業に参加。
95年~98年、米国OracleにてOracle RDBMSの開発をおこなっていた。
98年にNetscapeのソースコード公開(Mozilla)に衝撃をうけ、オープンソースの世界に飛びこみ、ついには会社も立ち上げてしまう。
2008年6月取締役CTOを退任し一プログラマとなった。

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群衆の叡知(えいち)サミット2008 - (WOCS2008Spring)

群衆の叡知サミット2008に参加した。http://techstyle.jp/wocs/2008spring/

パネリストはわたしも含めて下記の方々。
# 伊藤久美氏(IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社)
# 伊藤直也氏(株式会社はてな)
# 伊藤佳美氏(日本ユニシス株式会社)
# 生越昌己氏(WASP株式会社)ブログ
# 楠正憲氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)
# 鈴木友峰氏(日立製作所)
# 田代秀一氏(独立行政法人情報処理推進機構)
# 谷川正剛氏(株式会社Prediction)
# 徳力基彦氏(アジャイルメディア・ネットワーク)
# 西田隆一氏(CNET Networks Japan)
# 福岡秀幸氏(日本電気株式会社)
# 山口浩氏(駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部)
# 吉岡弘隆(ミラクル・リナックス株式会社)
# チェア:岡田良太郎氏(株式会社テックスタイル)

ustream.tvでの中継(今回はじめての試み)、会場から携帯を利用した集計システムなどインタラクティブな仕掛、休憩時間にはアイスクリーム(美味)やドーナツの配布、ドリンクサービスなどいたれりつくせりのおもてなしでなかなか楽しいイベントであった。

http://www.ustream.tv/channel/wocs2008spring

セッションの内容についてはustream.tvで確認いただくとして、今回参加したなかでいろいろ感じたこと主張したことなどを雑駁ではあるが記してみたい。

オープンソースについて

群衆の叡知あるいは集合知の成功例としてオープンソースソフトウェアという認識のもといろいろ議論をさせていただいた。

オープンソースソフトウェア特にLinuxの成功については鈴木さんのプレゼンが上手にまとまっていると思った。のちに生越さん(おごちゃん)がオープンソースはお花畑かよ、というツッコミがあったが、それはそれとして、成功例の一つとしてLinuxがあることは間違いない。

群衆の叡知が成立する条件として、参加者の多様性、独立性、分散性、集約性などが担保されている必要がある。

Linuxの場合、gitという分散バージョン管理システムで、ソースコードを管理しているが、そのログによれば、2.6.12から最新版までに、約97000のパッチが約4000人の人達によって投稿されている。emailアドレスによる分析では250を越える所属(会社など)。

Top changeset contributors by employer        
(Unknown)        28613     (29.6%)
(None)            9034     (9.3%)
Red Hat           8029     (8.3%)
Novell            7518     (7.8%)
IBM               6683     (6.9%)
Intel             3201     (3.3%)
Linux Foundation  2800     (2.9%)
SGI               1824     (1.9%)
Oracle            1471     (1.5%)
SWsoft            1353     (1.4%)
Others           26300     (27.2%)
Processed 96826 csets from 4032 developers
257 employers found
A total of 14088649 lines added, 4699892 removed (delta 9388757)
as of 5/16/2008

この例からも分るとおりLinuxの開発は参加者の多様性、独立性、分散性、集約性などがある。

特筆すべきは、4割近い人々(所属がUnknownないしNone)が、業務としてパッチを投稿しているのではないという事である。昨今Linuxの開発は大企業によって推進されているという指摘もあるが、確かにその側面もあるにはあるが、Red Hat/Nobel/IBMという御三家それぞれ10%以下のシェアであり、今だに多くの貢献は、個人ないしは小企業に属する人々によってなされているという典型的なロングテールの開発であるという事である。

4000人の開発者はどのような思いで、そのパッチを作ったかは4000通りの回答があると思う。仕事であったり純粋に楽しみであったり人それぞれである。それを集約したのがLinux Kernelという事になるかと思う。

社内ブログと人材流動性

群衆の叡知が成立する条件として、参加者の多様性、独立性、分散性、集約性などが担保されている必要があると先にのべた。

企業内で、SNSや社内ブログで、叡知を結集するためには、上記の条件を意識してクリアしないといけない。そこが社内SNSなどの難しさの一旦である。またイノベーションが発生するためには、何らかの形でも新しい結合(出会い)が必要で、部門間を越えた結合を制度として設計し実装することが必要条件となる。NECの福岡さんの報告にあったようにNECの社内SNSはそれをファシリエータと呼ばれる人々によってドライブしているようである。

福岡さんは、社内SNSなどをEGM (Employee Generated Media)という概念で説明していた。さらに、会社の枠を飛び越えたEGMの可能性を指摘していたが、正直ビジネスの分野では非常に難しいと感じた。

そのような知恵は、会社に所属するのではなく個人個人に属するものだと思う。であるならば、その属人的な知恵は会社内あるいは会社間SNSで閉じ込めるのではなく広く公開したほうが社会にとっても有益である。しかし、暗黙知を形式知にするようなもので、それはそれで難しい。であるならば、人材流動性を前提として、その属人的な価値を、人材とともに流通するような仕組を考えた方が実現可能性が高い気がする。

日本の労働慣行は、長期間な雇用を前提としている。終身雇用と言わないが2年半で会社を変えるというスタイルではないので人とともに重要なノウハウが業界でゆるく共有されるということもない。

一方シリコンバレーのIT産業であれば、例えばRDBMSの実装について、人々の転職によって、業界全体で緩く共有されている。あるいは大規模トランザクション処理のTipsが緩く共有されている。さらに共有基盤としてOracleなどの商用ソフトだけではなくMySQLなどのOSSを利用した運用ノウハウがコミュニティの暗黙知として様々な形で流通している。

そして上記のような状況がシリコンバレーの地域的な競争力を高めているとするのなら、日本という地域でも意識して、人材を流動させることにより、その環境を作ることが可能なのではないか。

事実、大企業ではなくWeb2.0系の会社(はてな、mixi、ドワンゴ(ニコ動)、Gree、ライブドア、Yahoo等々)に所属する若手のエンジニア達は、いろいろな勉強会あるいは読書会などで、自分たちの問題を等身大で語り初めているではないか。隣に座ったPerlのエラい人達と対等に語りあっているではないか。ビジネスとしては競合する会社に勤めている人達が同じ場で自由に情報交換をしている。

そしてOSSの利用技術について暗黙知を形式知に転換したり、バッドノウハウとして情報交換している。

まさに、そこに集う人々は多様性、独立性、分散性、集約性などが担保されている状況が発生しつつある。

東京という地域では、結果として、そのような技術者のルツボがあり、新しい出会いがあり、イノベーションの萌芽が、見られる。

感想など

まだまだ語りたいことはてんこ盛りなのであるが、紙面がつきたので、このくらいにしておきたい。

最後になったが、素晴しい機会をあたえてくれた岡田さん、気持のいいおもてなしをしていただいたスタッフの皆さん、活発な議論をしていただいたパネリストの皆さん、ustream.tvでの参加者、そして会場に参加していただいた皆さん、大変ありがとうございました。皆さんのおかげで大変楽しい時間を過したと共に自分の考えをまとめるキッカケ、気付きのヒントを多数いただいた。お腹いっぱい、すっきりしました。

ありがとうございました(ぺこり)

付録:Linux Kernel Source Codeの分析について

下記にあるgitdmというpythonのスクリプトを利用した。pythonおよびpython-egenix-mxdatetimeなどのパッケージをインストールしておく必要がある。
http://www.kernel.org/pub/linux/kernel/people/gregkh/kernel_history/

Who wrote 2.6.20? 誰がlinux 2.6.20を書いたのか?/ユメのチカラ
http://blog.miraclelinux.com/yume/2007/06/who_wrote_2620__4b18.html

カーネル読書会/ユメのチカラ
http://blog.miraclelinux.com/yume/2007/06/post_da8e.html
GregKHがLinux開発者のプロフィールの分析を発表した。後のOttawa Linux Symposiumでの論文のモトネタとなる。

Greg KHの論文
http://ols.108.redhat.com/2007/Reprints/kroah-hartman-Reprint.pdf

追記:WOCS2008springに言及のあるブログ、日記など。

歌舞伎町で遇ったギークなタクシー運転手の編み出した、群衆の英知を活かした馬券購入法/雑種路線でいこう
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080521/wocs

群衆の叡智サミット2008Spring行って来た/public static void main
http://d.hatena.ne.jp/Kishi/20080522/1211419795

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コメント

はじめまして。
昨日の LWE でのパネルディスカッションを拝見していたものです。

# mixi の私の日記へのコメントありがとうございます。

LWE でオフトピだからと割愛されてしまった内容はこういうことなのですね。
個人知を会社内に閉じ込めるようなことをしていてはエンジニアとしての発展がないと。

自分の実践につなげられるかはちょっといろいろあるのですが、刺激を受けるご意見です。

なるひこさん、コメントありがとうございます。

勉強会によって巨大な知の流通が始まっているような実感があります。
本日のブログのネタにもしました。

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