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プロフィール

吉岡 弘隆 - よしおか ひろたか

日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員
OSDL Board of Directorsを歴任
カーネル読書会主宰

2000年6月、ミラクル・リナックスの創業に参加。
95年~98年、米国OracleにてOracle RDBMSの開発をおこなっていた。
98年にNetscapeのソースコード公開(Mozilla)に衝撃をうけ、オープンソースの世界に飛びこみ、ついには会社も立ち上げてしまう。
2008年6月取締役CTOを退任し一プログラマとなった。

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初めてのRuby

「初めてのRuby」は、他のプログラミング言語の経験があるプログラマ向けのRuby入門書である。プログラミングの入門書ではない。この明確なターゲット読者の設定がこの本の特長であり成功の要因である。

すくなくともわたしにとって、他言語(C言語)でのプログラミング経験があるものにとって、これほどまでにコンパクトかつ明解にRubyの真髄を語っている本書ほど、ありがたいものはない。

わたしはかねてからプログラミング言語の文法書は50ページ以内であるべきだと思っている。プログラミング言語の構文はシンプルであればあるほどいい。道具はシンプルな方が応用が効く。

それはともかく、プログラミング経験者にとって、第二、第三のプログラミング言語を学習するということは、計算機の入門、例えば計算機はどう動くかとか、メインメモリ、CPU、外部記憶の機能はどうだという事を学んだり、プログラミングの入門、アルゴリズムとか、計算量、データ構造、例えば、表、ハッシュ、N分木等々について学ぶのではなくて、そのプログラミング言語の文法や意味論を、そしてそのプログラミング言語の背景にあるプラグマティズムを学ぶことである。

つまり第二第三のプログラミング言語を学ぶということは、その言語が持つ哲学、思想、あるいは開発コミュニティのお作法までも含めた何がしかを学ぶことである。例えば、Perlという奇妙なプログラミング言語を学ぶということは、CPANというPerlハッカー達がよってたかって作ったライブラリのレポジトリについての何がしかを学ぶということで、そのような事を含めて理解してはじめてPerlという言語を学んだということになる。

なぜわざわざそのようなプラグマティズムを貴重な時間コストをかけてまでプログラマが学ぼうとするのか。そこにはそのコミュニティがはぐくんでいるベストプラクティスがあって、それは言語の壁をこえた普遍性があり、それを学ぶことの意義というのは強調されても強調されすぎることはないと考えている。

「初めてのRuby」はRubyを愛してやまないYuguiさんが、Ruby初学者に向けてRubyを学ぶ道標をあたえている。

他言語を使いこなすプログラマに向けて極めてコンパクトかつ明瞭にRubyのプラグマティズムを紹介している。言語の文法書にはでてこないRubyの考えかたを紹介している。

なぜRubyではforで繰り替えしを書かないのか。C言語族に属するわたしにとってYuguiさんの説明は明瞭でかつ説得力がある。なるほどなるほど。

先日、tokyo-emacsというemacs利用者(初心者からハッカーまで)の集りで、いろいろなelispのコードをながめたのだが、そのコードのスタイルが、なにかCを感じさせるものが多く、皆で「これってCだよなあ」というような事を言っていた。関数型と呼ばれる言語(elisp)ですらCの影響を受けたプログラマが書けばCの匂いのするプログラムになってしまうのである。

プログラミング言語がノイマン型コンピュータを抽象化し動作可能なものとしたのなら、そのプログラミングパラダイムはおおかれすくなかれ似たようなものになる。変数という概念があり、メモリはアドレスというもので識別され、そこには状態を保持するので、代入という概念を持つ。手続型としてくくれるものは、ほとんど似たようなものだと言える。このプログラミングパラダイムの中で様々な文法的な選択肢を絶妙なバランスで取捨選択したのがRubyであり、その取捨選択の思想をわかりやすく説明しているのが、本書である。

プログラミング経験者が第二、第三のプログラミング言語を学ぶ意義はなにか。プログラミング言語の瑣末な文法上の差異を学ぶことが重要なわけではない。プログラミング入門的な知識を得るために行なうのではなくて、言語設計の思想、ライブラリや、それを作りあげている開発者の思い、考え、ひいてはそのプログラミング哲学について学ぶというところにある。その言語コミュニティが持つ暗黙の哲学、価値観を学ぶプロセスにある。

しかしながら、そのような暗黙の哲学、価値観は究極にはそのプログラミングコミュニティに属し当事者にならないと容易には獲得できない。

本書は、そのコミュニティの入口まで初学者を連れてきてくれる。

Ruby初心者も中級者もばりばりのRubyハッカーも本書から得られるものは大きい。初心者にとっては、Ruby言語のみならずその思想にふれられるところ、中級者にとっては、そのRubyらしさという必ずしも明確になっていなかったものに対する指針がえられるところ、ばりばりのRubyハッカーにとっては、今まで空気のように感じていたRubyらしさというものを明示的に表現するというのはどのような事かということを整理、理解するつてとして本書の意義は大きい。

Rubyコミュニティの豊かな土壌からRubyKaigi(本当に素晴しい会議だ)があり、本書のような良書が生れ、多くのrubyistを拡大再生産している。持続可能なコミュニティはその文化を明示的に外に示し新人をリクルートする。素晴しいことである。

本書はRubyコミュニティの豊かさの象徴であると言っても過言ではないと思う。皆様にお勧めする。

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読んでいて気がついた誤殖など。
p53
誤:a >> 1  #=> 0b100
正:a >> 1  #=> 0b110
誤:a << -1 #=> 0b100
正:a << -1 #=> 0b110

p71
誤:p story[8, 7]     #=> "Grundy"
正:p story[8, 7]     #=> "Grundy,"
誤:p story[8...15]   #=> "Grundy"
正:p story[8...15]   #=> "Grundy,"

-------------------------------
索引について。

宇宙船演算子(p52)という見出しはあるが、"<=>"での見出しはない。ところがp36で<=>が初出するが何の解説もないので読者はp52を読むまで理解できない。索引で<=>の見出しがあれば、とりあえづそれを引いて疑問は解決する。

後方参照について

後に説明する項目については、多くの場合、明確にどこどこで説明すると明示してあるので安心して読みすすめる。下記は、いくつかの例外。

p112
def some_method(param = nil)
この構文(デフォルト値をあたえる)についていきなり解説なしで登場し、とまどった。

-------------------------------
p124
本章で扱っていないこと
イテレータとでているが、p119 6.3.6 イテレータを解説しているのではと思う。

p130
階乗の定義で、わたしなら再帰で書くなあと思った。
def fact(n); if n==0 then 1 else n*fact(n-1) end end

vi はじめに
File.chmodとFile#chmodの違いというのが結局どこらへんにあるのか良くわからなかった。

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本書を越える範囲のことについて

続編があるとしたら(勝手に期待するところであるが)、以下についてRuby風のお作法をぜひ読みたい。

テストの仕方
デバッグの仕方
性能のチューニング方法

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『初めてのRuby』サポートページ
http://yugui.jp/wiki/hiki.cgi?LearningRuby
『初めてのRuby』正誤表
http://yugui.jp/wiki/LearningRuby-Errata

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コメント

私も「初めてのRuby」を読んでグッと来た者です。
現状では、経験のあるプログラマが、Rubyを学ぶのに最適な入門書だと思います。

良くできているだけに、「あとコレがあればなあ」と私が思ったことを2点書きます。
1. 練習問題が欲しいですね。(プログラマが読者ですから、何かを作って動かしたくなりますよね。)
2. Rubyの魅力についての語り。(Ruby LOVEな方が書いているのですから、その愛を文章にしてほしいです。)

udさん、コメントありがとうございます。

練習問題という発想はわたしにはなかったです。だけどいい教科書にはいい練習問題がついていますものね。

Rubyの魅力については十分(?)溢れていたと思います。

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